医療コラム/塩谷郡市医師会

塩谷郡市医師会のリレーコラム。毎回テーマを変えて各分野の話題をご提供

身近な町医者

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    岡医院院長 岡 一雄

    「先生はわたしのかかりつけ医ですから、最期まで先生にお世話になりたいと思います」 診療所に月に一度やってくる老婦人は、診察の終わりに念を押すようにこう付け加えます。 地域の町医者として「かかりつけ医」の責任を再認識させてくれる重い一言です。なぜなら医者はこの一言によって今後の彼女の体や心だけでなく、人生の終焉(しゅうえん)にまでも大きくかかわることになるからです。 大学病院の勤務医だったころの私にとって「外来の患者さん」は自分の患者さんというよりも「大学病院を受診する患者さん」という感覚の方が強く、「入院で受け持った患者さん」だけがかろうじて自分の患者さんだと感じられました。 一方、受診する患者さん側も担当医がたびたび交代するため「◯◯先生に診てもらう」というより「大学病院で診てもらう」という意識が強いのも事実です。 もちろん患者さんから「最期までお世話になります」なんて言われたことなどありませんでした。 小さな子供を育てている若い夫婦の「かかりつけ医」は子供の病気を治療するだけでなく時には子育ての相談も受けます。 生活習慣病で悩む壮年層にとって「かかりつけ医」は普段の健康管理を任せるだけでなく、仕事の上でのストレスや悩みを相談する相手でもあります。 そして、自分の人生の終わりを意識するようになった高齢者にとっては「かかりつけ医」とは最後まで面倒をみてくれる医者のことなのです。 それぞれ患者さんと「かかりつけ医」のかかわり方は違っても、お互いに信頼する気持ちがあってこそ成り立つ関係です。 一昨年、塩谷郡市医師会で域内の住民三千人に地域医療に関するアンケートを実施しました。アンケートに答えてくれた方の約六割が「かかりつけ医」がいると答えました。 「かかりつけ医」とはもともとかかり慣れている医者という意味ですが、実際はそれだけでは言い尽せないさまざまな役柄を持っているのではないかと思います。


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