医療コラム/塩谷郡市医師会

塩谷郡市医師会のリレーコラム。毎回テーマを変えて各分野の話題をご提供

第26回「在宅医療と栄養〜最後のひと口〜」

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      栃木県栄養士会 栄養士 長嶋孝子

     我が家とお酒とタバコ、そして6人の孫をこよなく愛した義父は、64歳で慢性閉塞性肺炎(COPD)を発症し、幾度となく入退院を繰り返しました。やっと身体に適応する薬が見つかり、主治医から「病院での治療はすべて施しましたので退院して在宅療養になりますが、ご本人は常に苦しく辛く、普通の生活を営むのは難しくなってくるでしょう。」と宣告されました。発症前は54圓世辰紳僚鼎退院時の体重は38圓泙埜詐してしまいました。

     私にできることは?その答えは、〜おいしいごはんを作ること〜でした。幸い義父は食卓に並んだ料理は何でもおいしい、おいしいと言いながら食べてくれましたので、体調が良い時には、筋力の素になるたんぱく質(肉・魚・卵・大豆製品)のおかずとエネルギーの素でありながら吸収率の良い植物性たんぱく質を多く含むごはんをいつもより2〜3口多く盛りつけてもペロリと平らげ、大好物の野菜の煮物は、家族のなかでも一番多く食べていました。呼吸が苦しい時には食事量が減ってしまいますが、大好きな煮物に少量でもエネルギーが多く摂れる芋類を多く入れると食べてくれました。少しずつ体重増加が見られると、自らウォーキングを始めたのには驚きでしたが、ウォーキング後に牛乳1本飲むよう勧めました。以前は下痢してしまうからと拒否されましたが、販売店から乳糖不耐症の方でも大丈夫な牛乳を1本義父の分として届けていただくと、自然に自分から毎日飲むようになりました。

     脳梗塞を発症し、88歳で永眠するまでの2年間車いすの生活ではありましたが、大好きな我が家で過ごすことができました。ただ、残念なことは、最後の入院生活では誤嚥性肺炎防止のために経口摂取が制限されたため、片手の手のひらを差し出しながら「少しでいいから煮物を食べさせて」と言っていた義父の願いに応えてあげられなかったことです。

     栄養士の私からのひと言。どうぞ『食べること』を ( おろそ ) かにしないでください。作ることにちょっぴり疲れた時には市販品を上手に使って美味しく食べてください。私の最後のひと口・・・自分で作って食べたいと願っています。



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