医療コラム/塩谷郡市医師会

塩谷郡市医師会のリレーコラム。毎回テーマを変えて各分野の話題をご提供

第22回「がんの緩和ケア」

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     在宅ほすぴす 渡辺邦彦(高根沢町)

     がんの緩和ケアとは、患者さんの苦痛を和らげ生活の質 ( Q O L)を向上させることです。がん患者さんの苦痛で最も多いのが、がんによって生じる疼痛です。痛みの性質を正確に評価し、モルヒネ等の医療用麻薬や、鎮痛補助薬を適切に使用すると和らげることができます。

     85歳の原発不明がんの患者さんで、骨転移による腰痛をモルヒネのカプセル剤でコントロールできていた所、ある日坐骨神経の走行に沿った、痺れる様な痛みに変わりました。即効性のモルヒネを数回使用しても痛いと連絡があり往診しました。静脈ラインを確保し、注射剤である塩酸モルヒネを5分毎に注入し、疼痛が緩和されました。その後PCAポンプで持続的にモルヒネを皮下に注射することで、痛みなく過ごせるようになりました。がんの腰椎転移による体性痛が、脊柱管内に進展し神経の後根を刺激する神経障害性疼痛になったため、それまでの飲み薬では効果がなかったわけです。

    肺がんや肺転移で生じる呼吸困難、胃がんなどで生じる悪心・嘔吐、肝転移や腹膜播種による腹部膨満感など、臓器の障害で生じる不快な感覚を世界疼痛会議は疼痛と定義しています。このような不快な症状に対して酸素吸入、制吐剤、利尿薬などを使っても緩和されないことが多いのですが、内臓痛と評価できればモルヒネや非モルヒネ系のオキシコンチンが有効です。胸水貯留による呼吸困難や腹水貯留による腹部膨満感にはモルヒネの効果も限られますが、胸腔穿刺、腹腔穿刺で劇的に症状は緩和されます。

     一人暮らしで畳の上に布団を敷いて生活していた82歳の肺転移の患者さんとお会いしました。呼吸困難が強く今にも亡くなりそうな状態でしたが、柱にもたれて座ってもらい、玄関の上がり框の段差を利用して胸腔穿刺を行い、胸水を抜きました。約10分の処置後「羽が生えたように楽になりました。」と笑顔が見られました。残された時間が短い場合でも、迅速に患者さんの不快な症状を緩和させてあげる必要があります。



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