医療コラム/塩谷郡市医師会

塩谷郡市医師会のリレーコラム。毎回テーマを変えて各分野の話題をご提供

第21回「終末期医療」

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     在宅ほすぴす 渡辺邦彦(高根沢町)

     私は、2006年11月から在宅緩和ケアを始め、今年の3月までの約12年間で1368名(がん患者1358名)の方を自宅で看取りました。その過半数が診療期間2週間以内の患者さんでした。予後が短ければ短い程、症状緩和に迅速性が求められます。最初の2、3年は痛みの症状緩和に時間がかかり、夜中の往診で患者さんのお宅で朝を迎えてしまうこともしばしばありました。1回1回の緊急往診が私を成長させてくれました。その様な在宅医としての私の使命は、最期まで患者さんの自己決定を支援することと考えています。煙草を吸いたくて退院してきた患者さんとは、在宅酸素に注意しながら吸える環境を一緒に考えます。医療用麻薬の服用法を丁寧に説明しても、説明より少なめに服用される患者さんは沢山います。私自身も病気の治療のためにモルヒネを服用した経験があり、麻薬を飲む恐怖感を知ってますので、飲めない理由を共感的に傾聴します。

     仙骨部に褥瘡がある患者さんが退院してきた際、特殊寝台とハイブリッドマットレスを提案しても受け入れず、板の間に座椅子を置いて寝そべってテレビを観ていました。よく話を伺うと、「そういうのは死ぬ前に使うと考えているんだ」とのことでした。その患者さんは、亡くなる前日に「ベッドを入れてください」と言われ、ご要望にお応えしました。

     低アルブミン性心不全となり、ポータブルトイレを推奨した患者さんが「分かりました」と笑顔で頷かれました。私が帰ると、家族に手伝わせてトイレまで歩き、トイレで亡くなりました。息子さんは医師の指示に従わずに亡くなったと自分たちを責めていましたが、「お父さんの自己決定を支援したのだから親孝行したのですよ」と説明すると安心されたようです。これらは、”Dignity of risk(リスクを負う尊厳)”であると思います。入院している患者さんではあり得ないことと思います。私は、これこそ、勇気を出して自宅へ戻ってこられた方々の権利と考え尊重します。



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