医療コラム/塩谷郡市医師会

塩谷郡市医師会のリレーコラム。毎回テーマを変えて各分野の話題をご提供

第20回「小児の在宅医療」

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     植木医院院長 植木雅人(塩谷町)

     「先生、この子ももう成人ですよ。長い間お世話になりました」「二十歳かぁ、8歳くらいからの付き合いだから、もう12年になるね」先天性の難病で乳幼児の時は入退院の繰り返しです。家族の家に帰りたい、在宅で医療を受けたいという希望があり、生まれた時から知っている私のところへ相談に来たのです。呼吸の安定のために気管を切開しチューブを入れています。1週間に一度はこのチューブを交換しなければいけないのです。母親から「チューブを交換してくれる先生がいないと家に帰れないのです、お願いできますか」それから約12年間、暦には関係なく週1回は訪問していました。

     小児の在宅医療になる原因は必ずしも先天性の病気とは限りません。交通事故あるいはスポーツによる外傷で重い脳障害などが残り、人工呼吸器などで在宅医療を受けている方も知っています。昨日まで元気だった子どもが一瞬の事故で重い脳障害などの後遺症が残ることがあるということを知っていてほしいものです。

    小児の在宅医療で考えなければならないことの一つに、介護するのは主に親になるということです。気管切開などをしている子などは、時間ごとに痰を取ってあげなければなりません。主な介護者になる親の精神的・身体的負担は大変なものになると思います。

     しかし、ある母親から「先生、ある施設が空いたので入所したらと勧められたのですが、私が元気なうちは家で看たいと思っています、わがままでしょうか」施設はいつでも空きがあって入所できるわけではありません。しかし、親の想いからすれば当然の言葉だと思います。

     そしてどうしても親の心配は、親亡き後の生活になると思います。小児の在宅医療、それは老いていく親が心配せず、わが子に重度の障害があっても皆と同じように成長していくことを支える医療と私は考えています。



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