医療コラム/塩谷郡市医師会

塩谷郡市医師会のリレーコラム。毎回テーマを変えて各分野の話題をご提供

第16回「神経難病の在宅医療」

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     佐藤クリニック院長 佐藤 泉(さくら市)

     父親にお休みと言いながら母のオムツに排せつ物がたまっていないかチェックする。

     もう何年もやっている手慣れた手つきで枕元にある2本あるチューブのうち1本を吸引のポンプにつなぎピンセットで摘まむと喉仏の下から出ている気管カニューレ(頚部に穴をあけて直接気管支までいれて人工呼吸器と接続するもの)の接続を外す。人工呼吸器の警報が鳴るが気にせず手に持ったチューブを気管に入れ痰を吸入し再び気管カニューレを接続する。すると今までなっていた警報が鳴りやんだ。吸引ポンプにもう1本あるチューブをつなぎかえると今度は口の中の唾を吸引。それが済むとパジャマのお腹部分を持ち上げ腹部に出ている胃瘻チューブ(腹部の皮膚から胃の中にチューブを入れ直接栄養を胃の中に送り込むチューブ)をチェックし異常がないことを確かめると少し温めた人工栄養をゆっくりと注入し始めた。少し様子をみて母が昨日足を痛がっていたのを思い出し「お母さん足は痛くない?」と聞くと、母はわずかに動く首の筋肉を使ってうなずいた。これは進行した神経難病の方を介護する家族の一コマです。

     神経難病は原因や治療法も不明で脳や神経が徐々に侵されていく病気で、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、筋ジストロフィーなどが有名です。始めのうちは手に力が入らない、うまく使えないといった症状ですが、その後手足のマヒが進行し食べ物をうまく噛むことが出来なくなったり、飲み込むのも困難となって誤嚥してしまうようになり、さらに呼吸ができなくなると人工呼吸器を24時間つける生活となっていきます。進行すると通院が困難となり、医師が定期的に訪問して体の状態をチェックし場合によっては採血や心電図などの検査もします。医師だけでなく、訪問看護、薬剤師、訪問介護、訪問入浴、人工呼吸器の業者などいろいろな職種の方が連携して患者さんと介護する家族を支えることで、少しでも自宅で穏やかに過ごせるように努力しています。



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