医療コラム/塩谷郡市医師会

塩谷郡市医師会のリレーコラム。毎回テーマを変えて各分野の話題をご提供

第13回 慢性呼吸不全について

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      森島医院 院長  森島 真(さくら市)

     慢性閉そく性肺疾患(COPD)で闘病を続けていた、落語家の桂歌丸さんが逝去されました。「陸でおぼれるような苦しさ」と表現していたとおり、ちょっと動くだけでも息切れがするため、鼻にチューブをつけて酸素吸入をしている姿をテレビで何度か見かけました。楽屋で着替えをしたり、高座に上がったりするのにも難儀をしたそうです。

     人は生きている間、常に、酸素を吸い込んで二酸化炭素を吐き出すという呼吸運動をしています。十分な酸素を吸い込めなかったり、二酸化炭素をうまく吐き出せなかったりすると、息が苦しく感じます。肺の病気などでこのような息苦しさが長く続く状態を、慢性呼吸不全といいます。

     慢性呼吸不全の主な原因は、慢性閉そく性肺疾患、肺線維症、肺結核後遺症、肺がんなどです。軽症の場合は坂道や階段などで息切れする程度ですが、症状が重くなると、身の回りのことをするだけでも息切れするため、歌丸さんのように日常的に酸素吸入を続ける在宅酸素療法(HOT)が必要になります。在宅医療で最も利用されている治療法で、保険適応があり、現在、全国で17万人以上の方が利用しています。ただし、効果は限定的であり、日常生活がかなり制限されるうえ、高額な医療費もかかるため(1割負担で月7千円余り、3割負担で月2万円余り)、慢性呼吸不全にならないよう、若いうちから健康的な生活習慣を心がけることが肝心です。特に、在宅酸素療法を行っている患者さんの4割以上を占める慢性閉そく性肺疾患は、喫煙習慣がなければほとんどかからない病気で、喫煙者の5〜10人に1人がかかると言われ、今後、増加することが予想されているので、喫煙している方はできるだけ早く禁煙することをお勧めします。

     在宅酸素療法を利用される場合の重要な注意点として、近くで火を使わないことが挙げられます。酸素は火の勢いを強くするため、やけどや火災の原因になります。実際に、酸素吸入をしながら喫煙したために、大やけどを負う事故が毎年のように発生しています。喫煙が原因で慢性呼吸不全になった人の中には、どんなに苦しくてもタバコが手放せないほど依存が強い人もいますが、とても危険ですし、肺や心臓に大きな負担がかかって呼吸不全を悪化させるので、絶対に禁煙してください。ご家族も、そばで喫煙しないようご協力ください。



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