医療コラム/塩谷郡市医師会

塩谷郡市医師会のリレーコラム。毎回テーマを変えて各分野の話題をご提供

第3回 在宅医療の現状

0

    塩谷郡市医師会 副会長 阿久津博美(高根沢町)

     人それぞれが望んでいる療養の形は、入院、外来、在宅など様々です。医師もまた個々の信念を持って医療を提供していますが、在宅医療の根本にあるのは、最後は自宅で迎えたいという強い意志だと思います。

     自宅での療養にこだわった患者さんの例です。この方は一人暮らしのため自宅での最後は難しいと誰もが思っていました。しかし本人の決意は固く、何度も入院を拒否してきました。いよいよ寝たきりになり、ケアマネージャーさんや訪問看護師さんに背中を押され、自宅を訪問することになりました。診察が終わると「帰れ」の一言、治療は何も望んでいないと感じました。私が来るのを待っていたのでしょうか、翌日自宅で息を引きとりました。交代で付き添っていた家族から、元気な頃よく手入れしていた庭木が見える部屋が最後の居場所だったとお聞きました。

     末期がんや老衰などで回復する可能性がない場合、延命治療を望まない方が大勢だと思います。しかし入院の場合は治療をしないという選択肢はほぼありません。一方、在宅では何もせずに家族が看取ることも可能でしょう。

     在宅医療には外来の空き時間に訪問する診療所と訪問診療に特化した診療所があります。前者はかかりつけの患者さんが通院できなくなり自然な形で訪問診療へ移行してきましたが、外来が主体で訪問できる時間は限られています。後者は在宅医療を専門に行う診療所で徐々に増加してきました。末期がんなどこれまでは入院が必要だった医療依存度の高い患者さんに対する訪問診療も担うようになってきました。

     在宅医療の整備はまだまだ不十分ですが、自分に合った在宅医療を選択できることが望まれます。そして上手に利用するには患者さん本人の希望について家族で話し合い協力していく姿勢が重要です。病状や家族の状況によっては方針が変わることがあるかも知れません。在宅医療は本人、家族など係わる人々が共通理解のもとに進めていく必要があります。



    categories

    selected entries

    archives

    search this site.

    others