医療コラム/塩谷郡市医師会

塩谷郡市医師会のリレーコラム。毎回テーマを変えて各分野の話題をご提供

第8回 前立腺がん 

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    国際医療福祉大学塩谷病院 院長 早川正道
     
     前立腺がんは、平成18年の統計では日本の男性のがんの第4位、死亡数は6位で明らかに増加しており、近い将来肺がんについで男性がんの2番目になると予想されています。他のがんに比べ高齢者に多いのが特徴で、約8割は66歳以上です。発症リスクとして食生活では乳製品や肉や脂肪の過剰摂取、喫煙等が挙げられ、一方発症を予防するには大豆、緑茶、魚、野菜(アブラナ科など)、コーヒー等の摂取、また運動が有用とされています。また遺伝的素因も重要で、第一度近親者に前立腺がん症例が1人いる場合は2倍、2~3人では5〜10倍の高リスクになると言われており、近親者に前立腺がんの方がいる場合は若い40歳代から検査をする必要があります。
     よく誤解されがちですが、中高年齢男性に多い前立腺肥大症(BPH)から前立腺がんは発生しません。しかし、発症年齢は重なるため、排尿時の症状がある方はBPHと前立腺がんの双方を考慮する必要があり、直腸診に加えて前立腺がんの腫瘍マーカーである前立腺特異抗体(PSA)検査を行います。直腸診で結石様硬結を触知する、あるいはPSAが高値の症例には前立腺生検が勧められます。ただし、前立腺炎や加齢でもPSA値が上がることもあり、一方BPH治療薬のプロスタール®やアボルブ®(5α還元酵素阻害剤)を服用している場合はPSA値が低下するため注意が必要です。
     前立腺がんの治療は多様です。がんが限局していれば、前立腺摘除術や放射線外照射(または小線源療法)が一般的ですが、低リスク群では無治療観察も行われています。腹腔鏡下または、ロボット支援腹腔鏡下手術も、従来の恥骨後式摘除術と同等の制がん効果、ならびに排尿機能や性機能の術後回復状況が望めます。局所浸潤がんには、放射線療法またはホルモン療法との併用が推奨されます。転移症例にはホルモン療法です。他臓器転移がなければ10年生存率は80〜90%、あれば5年生存率は20〜30%程度ですが、ホルモン療法に抵抗性となった症例に対し、近年新しい化学療法や2次ホルモン療法が開発され、生存期間の延長が期待されています。

      


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